東京高等裁判所 昭和48年(う)1361号 判決
被告人 本郷純康
〔抄 録〕
所論は原判決が第二、第三の証拠として運転免許証、手製脇差を挙示しているけれども、これらは被告人に対する覚せい剤取締法違反被疑事件についての逮捕状により被告人を逮捕するに際し必要もないのに右被疑事件と無関係な前記物件を令状によらないで被告人居宅およびその前に駐車中の自動車を捜索して押収したものである。このような違法な手続によって収集した証拠であるからこれらは本来証拠能力がなく、原判決第二、第三は右の各証拠物を除けば被告人の自白だけが証拠であるから右第二、第三事実について被告人を有罪とすることはできないというに帰する。
そこで記録を調査して検討するに、被告人の原審における右証拠物の領置手続に関する供述、任意提出書二通(記録百十四丁、百三十丁)領置調書二通(記録百十五丁、百三十一丁)逮捕状(記録二百九十五丁)によれば、昭和四十七年四月二十五日午前十時四十五分、東京都八王子市泉町千二百七十九番地の一の被告人方で覚せい剤取締法違反被疑事件で被告人を逮捕するに際し現場で捜索がなされ、被告人方納戸の中から手製脇差が、被告人方庭に駐車中の自動車の中から運転免許証が夫々発見され、被告人は捜査官から、これらの物の所持の経緯について説明を求められ、原判示第二、第三の事実を認めたうえ、これらを任意に提出したものであることが認められる。(前記記録百十四丁の任意提出書は被告人が和田汎名義の運転免許証を提出したこと、記録百三十丁の任意提出書は被告人から手製刀一振の提出があったことという立証趣旨で検察官から夫々取調請求され、いずれも原審において同意のうえ取調べられている。なお所論中には右逮捕状により被告人を逮捕する場合捜索、差押の必要がなかったようにいう部分があるけれども、たとえ所論のように時間的に被疑事実の時と隔っていたとしても、覚せい剤譲受の当事者である被告人の住居を捜索する必要がなかったということはできない。従って右住居を捜索したことじたい違法であるということはできない。)一件記録に徴しても右の認定を左右するに足るものはない。このように捜索、差押を承諾する権限を有する被告人が捜索差押の趣旨を理解して提出を承諾したと認められる以上右証拠物の領置を違法視することは許されない。してみればこれらの証拠物を原判示第二、第三の事実認定の証拠とした原判決は相当であって論旨は結局理由がなく採用できない。
(矢部 宮脇 桑田)